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森林インストラクターと歩く「真人山フラワーウォッチングツアー」

 2025年4月20日(日)、森の学校2025 森林インストラクターと歩く「真人山フラワーウォッチングツアー」が、「守りたい秋田の里地里山50」に認定された横手市増田町真人山で開催された。参加者は29名。さくら名所100選・真人公園を起点に九十九折りの登山道沿いを登り、途中最も眺望が良い三吉神社を経て標高390mの真人山山頂へ。帰路は、北に向かって下り、起点の真人公園に至る一周ツアー。朝から雨の予報ではあったが、奇跡的に雨に見舞われることなく、コガラ、エナガ、アオゲラ、ウグイス イカルなどの囀りを聞きながら、オクチョウジザクラやタムシバ、マルバマンサク、キブシ、ジョウジョウバカマ、ナガハシスミレ、シュンラン、ミズバショウなど、早春のフラワーウォッチングツアーを存分に楽しんだ。
  • 共催/秋田県森林学習交流館指定管理者、秋田県森林インストラクター会
  • 協賛/(一社)秋田県森と水の協会 
  • 講師・・・森林インストラクターの酒井さん、次田さん、佐々木さん、花田さんの4名と、サポーターガールズの2名。
  • 真人山一周コース・・・真人公園→三吉神社(標高350m)→真人山(標高390m)→倉狩沼→真人公園(約6kmの山道)
  • さくら名所100選&「守りたい秋田の里地里山50」・・・秋田のさくらの名所100選は、仙北市角館町桧木内川堤・武家屋敷、秋田市千秋公園、横手市増田町真人公園の3つ。また真人山400haが令和5年度「守りたい秋田の里地里山50」に認定された。 
  • リョウブ・・・実が多数集まって垂れ下がり、褐色に熟す。柔らかな若葉は食用になり、茹でて干すと長期保存ができるので、昔は重要な救荒食であった。
  • 名前の由来・・・律令時代、田畑の面積に応じてリョウブを植えさせ、葉を採取して貯蔵することを命ずる官令が発せられた。その基準量を意味する「令」と官令を指す「法」から、「令法(りょうぶ)」と書く。 
  • 真人山登山口 
  • キブシ・・・早春の野山で、バッコヤナギと同じく他に先駆けて咲き、まるで黄色い暖簾を吊り下げたように長い花序を垂らす。雌雄異株で、雄株の花穂は長く、雌株は短い。
  • 名前の由来・・・江戸時代、既婚女性が歯を黒く染めたお歯黒にヌルデの種子・五倍子(フシ)を使用した。その代用としてキブシの果実が利用されたことから、木の五倍子(フシ)で「木五倍子」と書く。 
  • オオバクロモジ・・・葉が展開すると同時に黄緑色の花が多数咲く。早春の里山では、マンサクに次いで早く開花する。幹や枝が緑色をし、枝を折ると芳香があることから、和菓子の楊枝に欠かせない樹木である。芳香、殺菌力、丈夫さなど、他の木には代えがたい価値がある。 
  • ハリギリ・・・枝に針のような刺があり、キリのように成長が早く、材や大きな葉が似ていることから、「針桐」と書く。同じウコギ科のタラノキ同様食用になる。ただし、タラノキに比べるとアクが強く、味が劣ることから、アクダラ、イヌダラなどと呼ぶ地方もある。
  • イワガラミ・・・若葉を摘むとキュウリの香りがする。山菜として利用される。茹でてさらしてから、おひたしや和え物に。
  • イワガラミの実・・・蒴果は倒円錐形で、秋に裂開して種子がこぼれる。
  • コシアブラの芽吹き・・・若芽はタラノメと並び人気の山菜だが、秋田ではほとんど食べなかった。しかし、最近は山菜ブームに乗ってポストタラノメ的存在になりつつある。幹がブナのように白く、枝の先に5枚の葉を掌のようにつけているのが特徴。タラノキのようにトゲがないのも人気の秘密かもしれない。
  • 第一休憩地点
  • オクチョウジザクラ・・・里山に自生するサクラで、一番早く咲く。花を横から見ると、開き方が漢字の「丁」のように見えることから、「丁字桜」。その変種で、日本海側の多雪地帯・奥地に自生することから、「奥丁字桜」と書く。 
  • ナガハシスミレ(別名テングスミレ)・・・タチツボスミレの仲間で、距は上向きで、スミレの仲間では最も長い。その細長い花の距を、天狗の花に例えて、別名テングスミレと呼ばれている。 
  • エゾユズリハ・・・春になって若葉がのびると、古い葉は「若葉に譲る」ように散ることから「ユズリハ」。秋田など多雪地帯には、その変種で、高さが1mにも満たないほど低く、下部が地を這うなど、多雪地帯に適応したエゾユズリハである。 
  • ホオノキの若芽 
  • マルバマンサク・・・早春、まだ山々に雪が残る頃、その雪を払いのけながら小さい黄色の花をつける。名前の由来は、多数花の咲く様子が「豊年満作」に通じているとする説や、早春真っ先に咲くので「まず咲く」からの説がある。葉が丸みを帯びたマンサクの意味から、「丸葉満作」と書く。 
  • ショウジョウバカマ・・・花は、雪解けと同時に咲き、線香花火のような鮮やかな色でよく目立つ。春の雪解けを待って咲くことから、ユキワリソウとも呼ばれている。葉は常緑で、ロゼット状に多数が根生する。 
  • ショウジョウバカマ・ロード・・・左側斜面に延々と咲き誇るショウジョウバカマ群落が続く。 
  • タムシバ・・・山に春を告げる白い花がタムシバで、里に春を告げる白い花がコブシである。その見分け方は、タムシバの花の下には葉がつかないが、コブシは花の下に小さな葉が一枚ついている点で区別できる。
  • 名前の由来・・・葉を噛むと甘みや爽やかな香りがあるので、杣人が山仕事の合間に噛んだことから、「噛む柴」。それが転訛したものと言われている。ニオイが群を抜いて良いことから、別名ニオイコブシと呼ばれている。 
  • ツルアリドオシ・・・葉は対生し、深緑色で厚く、無毛。果実は液果で球形となり、赤く熟す。
  • ミチノクホンモンジスゲ 
  • 途中最も眺望が良い三吉神社(標高350m)・・・田んぼが広がる横手盆地から遠くは鳥海山まで見える。横手盆地は、北部を仙北平野、中南部を平鹿平野と呼ぶこともあるが、その大きさは総面積約694km?。2位の松本盆地480km?に対して約1.5倍の差がある。この広大な田んぼに水が張られると、目の前一面が湿原に変化したような最高の絶景を拝むことができる。
  • 真人山山頂へ(標高390m)・・・昼に近づくにつれて、雨が強くなる予報だったので、ここで引き返す予定だった。ところが、奇跡的に雨が降らなかったので、一周コースを辿って歩くことにする。
  • 森のエビフライ・・・松ぼっくりの中の種を、ニホンリスが食べた残骸を「森のエビフライ」と呼んでいる。アカマツの球果には、40~50個の種が入っている。この種を取り出すためにリスが鱗片をかじって剥がす。真人山山頂へ向かう途中に、たくさんのエビフライがあった。ニホンリスお気に入りの食事場所のようだ。下る途中、可愛いニホンリスがサプライズ登場してくれたのはラッキーだった。
  • ユキツバキ群落・・・秋田県内では主に県南地方に自生し、北限のユキツバキとして知られている。高さは1~2mと低いのは、雪の下に潜って、寒さや乾燥から体を守るためである。だからユキツバキは、小さくなる方向に進化したと言われている。雪の重みで折れないよう、幹がしなやかである。樹形は垂直に立ち上がるのではなく、枝が地を這うように伸びて、ほふく型の樹形をしている。さらに、種子だけでなく、地面に押し付けられた枝が、地面についた点から根を出して、いわばクローンによる繁殖も行っている。空間を巧みに棲み分けて進化したとはいえ、生命力の凄さに驚かされる。
  • ウサギカジリ・・・冬のノウサギは、雪の上に出ている木の皮や木の芽をかじって生きている。特に好きなのがコシアブラの木で、この木を見つけると、きれいに皮も芽もかじってしまう。だから、ウサギカジリなどとも呼ばれている。 
  • ウリハダカエデ・・・緑色のスベスベした樹皮は、マクワウリの実に似ているのが最大の特徴。山地のやや湿り気のある雑木林などに生育する雌雄異株の落葉高木。株が育つとオスからメスに、環境が悪化した場合もメスに性転換する不思議な特性をもっている。
  • ウリハダカエデの実・・・垂れ下がる果実は、プロペラ状の翼の様になっているので、「翼果」と言う。風を受けると、クルクル回転しながら遠くまで飛んでいく。
  • 隠れた名所・ミズバショウ群落
  • バッコヤナギ・・・早春、ネコヤナギと似た花穂をつけるが、生えている場所が違う。湿った場所ではなく、山地や原野、林道沿いのやや乾いた所、崖地などに生える。
  • 残雪の上を歩く・・・今年は意外に残雪が多く、桜の開花が1週間ほど遅いようだ。 
  • バッケ(ふきのとう) 雄花(上左写真)・・・星形の花びらで、全体的に花粉で黄色っぽい。花粉を出し終えると枯れる。
  • バッケ(ふきのとう)雌花(上右写真)・・・白っぽくて細い糸状のめしべの花柱がびっしり。虫によって、雄花から雌花へと花粉が運ばれると、実を結ぶ。雌花のフキノトウは、30~50cmほどに茎を伸ばす。これをトウが立つという。
  • ヒメヤシャブシの実・・・ヒメヤシャブシは日本海側に分布し、多雪地の崩壊地などに好んで生える。実は矢尻状に尖るのが特徴。 
  • オオカマキリの卵鞘(らんしょう)・・・カマキリは、数十から数百個の卵をスポンジ状の物質に包んだ、卵鞘(らんしょう)と呼ばれる形で産卵する。この卵鞘は、断熱効果のある泡状の物質で包まれているので、雪や寒さから卵を守ることができる。だから、雪の下でも卵鞘はたくさん見つかり、雪に覆われていても問題なく孵化するという。
  • 参考:カマキリの孵化・・・5月に入ると孵化する。幼虫は糸を引いて卵鞘からぶら下がるようにして、次々と出てきて、薄い皮を脱ぎ、1齢幼虫になる。 
  • サルトリイバラの赤い実・・熟すと赤色になる。その目立つ真っ赤な実は、鳥を誘い、果実と一緒に種を飲み込んで移動した後、糞とともに未消化の種子を散布してもらう戦略だといわれている。 
  • カタクリ、ヒメアオキ 
  • オトメエンゴサク、シュンラン 
  • アブラチャン・・・キブシと同じ頃、葉に先立って星のような形の淡い黄色の花を咲かせ、山の春を鮮やかに彩る。チャンとは、瀝青のことで、天然アスファルトや石油など炭化水素類の総称。材や果実が油分を多く含み、生木で燃えやすいことが名前の由来。昔は、果実や枝から油を搾り灯油として使った。油分が多いので、薪炭や山で火を焚く時に用いられた。 
  • 鮮やかな萌黄色の苔と滴る水の美
  • 奇跡的に雨を跳ね返した「晴れ女・晴れ男」一行記念撮影(三吉神社) 
  • あきた里山サミット開催 2025年5月31日(土)13:30~16:00(入場無料)
  • 会場 横手市役所十文字庁舎交流ホール
  • 主催 「あきた里山サミット」実行委員会 増田ネイチャークラブ / 共催 横手市