2019森の学校 秋田駒ヶ岳トレッキング
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2019年6月11日(火)、森の学校「秋田駒ヶ岳トレッキング 春の息吹を感じよう」が花の百名山・秋田駒ヶ岳で開催された。参加者は39名。秋田駒ヶ岳は、雪解け後に花が咲く植物の種類が圧倒的に多い。パークボランティアや森の案内人の方々から、植物の名前やその由来、見分け方、生態などの解説を聞きながら、数え切れないほどの草花を観察した。あいにく午前中は強風と流れるガス、手がかじかむほどの寒さに見舞われた。それだけに、その厳しい環境と短い夏に急いで花を咲かせ、実をつけようと必死で生き抜く植物たちから、たくさんの元気をもらった。
- 主催/秋田県森の案内人協議会
- 協賛/(公社)秋田県緑化推進委員会
- 協力/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン
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- 秋田駒ヶ岳マップ・・・「秋田駒ヶ岳自然観察マップ」(編集/南八幡平地区パーク・ボランティア ホシガラスの会)より抜粋
- コース・・・秋田駒ケ岳八合目(1,310m)
片倉岳展望台(1,456m) 阿弥陀池(1,530m) 横岳(1,583m) 焼森(1,551m) シャクナゲコース 秋田駒ケ岳八合目(1,310m)
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- 強風と寒さ、濃いガスが流れる中、雪渓が続く急斜面をゆく・・・過酷な冬山に終わりを告げ、やっと遅い春が訪れても、また冬山に逆戻りすることもある。油断は禁物。そんな厳しい環境でも、雪が解けると、子孫を残すため、仲間を増やすために、競って花を咲かせ、実をつけようと必死で生きている。そんな植物たちから学ぶことは山ほどある。
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- 八合目駐車場付近は亜高山帯で、ダケカンバやミヤマハンノキなどの低木林になっている。あみだ池に向かうにつれて、ダケカンバは姿を消し、ハイマツやハクサンシャクナゲ、キャラボク、ミネザクラなどの群落が出現し、午前中の終点・あみだ池周辺になると、お花畑が広がる高山帯となる。
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- ミネカエデとナンゴクミネカエデの見分け方・・・ミネカエデの葉の先は、ナンゴクミネカエデのように尾状に長く伸びない。ナンゴクミネカエデの雄花は、花弁とガク片の幅が広く、隙間がないのに対して、ミネカエデは細く隙間がある。
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- コヨウラクツツジ・・・ツツジ科の中では最も花が地味で、一見、小さな赤い果実のように見える。
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- イワカガミとヒメイワカガミの見分け方・・・上左のイワカガミは花の色が淡紅色で葉の鋸歯は20~30個と多いのに対して、上右のヒメイワカガミは白色で鋸歯は角ばっていて大きいので区別できる。
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- イワウメ・・・草ではなく常緑小低木。和名は、岩場に生えて梅の花に似た花をつけることから。
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- キバナノコマノツメ・・・和名のコマノツメは、葉の形が子馬の足のヒヅメに似ていることから。焼森や大焼砂の砂礫地に生えているタカネスミレに似ている。見分け方は、本種は葉が薄く光沢がないが、タカネスミレは葉が厚く光沢があり、さらに葉表が強く巻き込みロート状になるものが多いので区別できる。
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- タカネスミレ・・・葉の表側が内側に強く巻き込み、ロート状になっているので、葉の形でキバナノコマノツメと区別できる。
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- コケモモ・・・ 常緑の小低木。花はツボミだが、赤みを帯びた白色。果実は真っ赤に熟す。
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- ミネザクラ(タカネザクラ) ・・・和名は、サクラの仲間で最も標高の高い所に生えることから。
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- ハイマツの雄花・・・6月、本年枝の下部に紅紫色の雄花を多数集まって咲かせる。雌花は上部の枝先の葉に包まれて見えない。
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- コバイケイソウ・・・花は毎年咲かず、3~4年に1回程度しか咲かない。豊作の年に当たると、圧倒するほど見事である。ちなみに葉をつかんでみると、花芽が全くなく、今年は咲かない年だろう。
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- ミヤマダイコンソウ・・・丸い大きな葉が目立つので覚えやすい。和名は、高山に生え、葉が大根の葉に似ていることから、「深山大根草」と書く。
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- お花畑・・・あみだ池の西側、男女岳と男岳に挟まれるように広がる草原は、通称「お花畑」と呼ばれている。秋田駒ヶ岳の高山植物の8割はここで見られ、人気ナンバーワンのお花畑。時折、強風とガスが吹きつけてきただけに、楽園とは裏腹の風雪の厳しさを思うと、それに耐え必死で美しい花を咲かせる高山植物たちに脱帽だった。
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- ミヤマキンバイは、雪消えとともに砂礫地をまたたく間に黄色に染め上げる。
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- ミネズオウ・・・地を這ってマット状に地面を覆う常緑小低木。和名は、高山帯に咲き、針葉樹のイチイ=スオウの葉に似ていることから、訛ってミネズオウ。
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- タカネクロスゲ・・・秋田県では、絶滅危惧種ⅠB類に指定されている貴重な植物。
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- ヒナザクラ・・・雪田の融雪地や湿原に大きな群落をつくる。雪が解けると次々に咲き出すので、6月(あみだ池周辺)~8月(浄土平)までの長い期間観察できる。
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- 秋田駒ヶ岳の生い立ち・・・およそ千万年前は海底だった。その後海底が盛り上がり、数十万年前は、円錐形の成層火山であった。その後、噴火で多量の溶岩が流出した結果、頂上部が陥没し、男岳、横岳、横尾根に囲まれた3km×1.5kmのカルデラができた。女岳や小岳は、その馬蹄形のカルデラ内に新しくできた中央火口丘である。
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- 活動を続ける火山・女岳(めだけ、1,512m)・・・1970年9月~1971年1月まで38年ぶりに噴火した現役の火山。男女岳山頂付近では、2017年9月以降、火山性地震の活動がやや活発な状況が引き続き認められ、また、女岳では地熱活動及び噴気活動が続いていることから、今後の火山活動の推移に注意が必要。噴火警戒レベル1。
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- 男女岳(おなめだけ)・・・秋田駒ヶ岳最高峰、標高1637m。
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- 秋田駒ヶ岳が花の名峰として名高い理由・・・多くの旧火口やカルデラ、外輪山などの変化のある火山地形であること。そして多量の降雪により多くの残雪が遅くまで残っているので、乾生、湿生の両植物が共に豊富に繁殖できる自然環境が整っていること。乾生植物の代表は、コマクサとタカネスミレ、湿生(雪田)植物の代表はチングルマとヒナザクラである。
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- 大焼砂・・・黒い火山礫が堆積した大焼砂は、タカネスミレ(6月中旬~7月上旬)とコマクサ(6月下旬~7月下旬)が大群生する場所として有名。両種は、風を遮る木も岩も無く、強風が吹き荒れ、冬には地表深くまで凍結する厳しい環境のために、他の植物では生育しにくい荒地に好んで根づく。
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- 焼森山頂(1,550m)に向かう・・・6月下旬頃、黄色の花・タカネスミレが斜面一杯に咲き誇る。その後、少し遅れてコマクサがピンクの花をつける。
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- タカネスミレの花は咲きはじめたばかり。見頃は、6月下旬以降。
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- ダケカンバの新緑が連なる登山道を下って八合目駐車場へ
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- 進藤農園のイチゴ・・・最後は、参加者全員に進藤農園自慢のイチゴが振舞われた。
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- 秋田駒ヶ岳で主にみられる花(「秋田駒ヶ岳自然観察マップ」より抜粋)
- 6月・・・ヒメイチゲ、シラネアオイ、ミヤマダイコンソウ、ミヤマキンバイ、タカネザクラ、キバナノコマノツメ、ミツバオウレン、イワウメ、タカネスミレ、イワカガミ、ミネズオウ、ムラサキヤシオ、ヒナザクラ、ツバメオモト、ハクサンチドリ、コマクサ、チングルマ
- 7月・・・コミヤマハンショウヅル、モミジカラマツ、コマクサ、ミヤマダイコンソウ、チングルマ、ミヤマキンバイ、マルバシモツケ、ハクサンフウロ、キバナノコマノツメ、タカネスミレ、イワカガミ、ミネズオウ、アオノツガザクラ、ウラジロヨウラク、ハクサンシャクナゲ、エゾツツジ、コケモモ、ヒナザクラ、イワイチョウ、エゾシオガマ、イワブクロ、ムシトリスミレ、ウサギギク、ミヤマウスユキソウ、トウゲブキ、ニッコウキスゲ、コバイケイソウ、ハクサンチドリ、オノエラン、ベニバナイチゴ、ヨツバシオガマ
- 8月・・・オヤマソバ、オクトリカブト、コミヤマハンショウヅル、モミジカラマツ、コマクサ、ウメバチソウ、ハクサンフウロ、アオノツガザクラ、ミヤマリンドウ、エソオヤマリンドウハクサンシャジン、イワブクロ、ウサギギク、ウゴアザミ、ミヤマウスユキソウ、トウゲブキ、ニッコウキスゲ、オノエラン
- 9月・・・ミヤマリンドウ、エゾオヤマリンドウ、ハクサンシャジン
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参 考 文 献 |
- 「秋田駒ヶ岳自然観察マップ」(編集/南八幡平地区パーク・ボランティア ホシガラスの会)
- 「フラワートレッキング 秋田駒ヶ岳」(日野東・葛西英明、無明舎出版)
- 写真集「秋田駒ケ岳 花紀行」(山田隆雄、無明舎出版)
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