山菜採りシリーズ⑧ アイコ(ミヤマイラクサ)
名の由来、群生場所、採り方、若芽、料理、栄養価が高い葉、繊維、和え物、保存、薬効、写真館 |
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- 山菜の女王・アイコ(ミヤマイラクサ)
シドケと並びブナ林を代表する山菜で、とりわけ秋田では人気が高く「山菜の女王」と呼ばれている。大きく伸びたアイコは、全草に鋭い刺があるのが最大の特徴で、素手で触ると悲鳴を挙げるほど痛い。深い山地の沢沿いに群生している。トゲがある姿からはとても想像できないほどクセがなく、万人向きの美味しい山菜である。
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- 名前の由来
深山に生え、刺(トゲ)で刺すことから深山刺草(ミヤマイラクサ)。秋田では、「ミヤマイラクサ」と言っても通用しない。100%愛情を込めて「アイコ」と呼ぶ。その名の由来は、アイヌ語説で、「アイ」は「刺」の意味、コは愛称。他に和え物としての「和えコ」がアイコに転訛したという説もある。
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- 群生場所
ブナ帯の谷・・・沢の近くの日当たりのよい腐葉土が堆積した所に群生する。しばしばシドケと混生するが、沢沿いの半日陰になっている斜面の上部にシドケ、斜面下にアイコが群生する場合が多い。
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- ニリンソウが咲けば、アイコとシドケが生えてくる(上の白い花がニリンソウ)
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- 採り方
イラクサは全草に細かい刺があり、その刺にはヒスタミンを含んでいる。不用意に素手で触ると、痛く、痒くなるので、必ず軍手をはめて採る。腐葉土が厚い所では、土中に入った茎の部分は意外に深い。できるだけ深い根元から採取するには、手前に折り返すように折り採るのがコツである。
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- 白神山地で出会った山菜採りのプロ・・・数十キロのアイコを採取していた。ブナ林に覆われた谷は、アイコの宝庫。
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- アイコの若芽・・・萌え出たばかりのアイコは、皮をむかずに食べられる
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- 茎が伸びて旬を過ぎたアイコ
茎が伸びて葉が大きく開くと、根元側からかたくなるが、茎の上部は十分食べられる。茎をつかみ、自然に折り取れるところから折り取る。
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- 料理
一般に茎を利用するが、葉の方が栄養価が高いので、捨てずに利用するのが大事なコツ。葉は味噌汁の具、天ぷらに。たくさん採れたら、葉を冷凍保存し、後で各種料理や炊き込みご飯に入れると美味しい。
茎のおひたし、和え物、酢醤油、あんかけ、粕和え、磯まき、すまし汁、卵とじ、油炒め、粕漬け、みりん漬け、一夜漬けなど。
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- 栄養価が高いアイコの葉・・・葉は味噌汁の具、天ぷらに。
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- アイコのおひたし
塩をひとつまみ入れた熱湯に根元からゆっくり入れる。沸騰は一旦鎮まるが、再び沸いたら、手早く冷水にさらす。一本一本皮をむいてから適当な長さに切り、マヨネーズやかつお節をふりかけ、醤油をつけて食べる。
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- アイコの皮はかたいので、茹でて水にさらしてから皮をむく
- アイコの皮は繊維の原材料
茎の繊維が強靭で、昔はこれを利用し布を織った。アイヌは、イラクサの繊維から織った布や着物をレタルペ(白いもの)と呼んで珍重していた。ヨーロッパでは、古くは第一次世界大戦下のドイツで、大規模な、イラクサの加工産業が発達したほどである。
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- 山菜の和え物
おひたしに一工夫加えた調理法が和え物。酢味噌和え、ゴマ和え、豆腐を使った白和え、辛子と醤油を混ぜた辛し和え、クルミやピーナッツをすって和えたものなど。
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- 保存
1週間程度の保存・・・新聞紙にくるみ冷蔵庫の野菜室に入れていけば、10日間ほどは保存できる。
長期保存・・・葉も茎も冷凍保存OK。熱湯にくぐらせて冷水につけ、小分けにして水を絞り、急速冷凍する。
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- 薬用効果
ビタミンC、カルシウム、ミネラルなど栄養価が高いが、茎よりも葉の方が栄養価が高い。葉を味噌汁などに利用するのがベスト。リューマチ、関節炎、小児のひきつけ、腰痛、神経痛、整腸。漢方では、蕁麻(じんま)と呼ばれる。
- 「秋田のハーブを知ってもらい隊」代表の荻田優美子さんによると、アイコの葉にはケイ素605ppm、葉酸180μg/100g(日本食品分析センター分析試験成績書)が検出されたという。ケイ素はネトル特有の化粧水に使われる成分で、葉酸は造血のハーブと呼ばれる成分と同じ成分である。秋田では葉を捨てて、茎だけ山菜として利用するのが一般的である。しかし、これらの分析試験結果を踏まえると、栄養価と薬用効果の高いアイコの葉を捨てるのはもったいないことが分かる。
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アイコ写真館 |
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参 考 文 献 |
「薬効もある山野草カラー百科」(畠山陽一、パッチワーク通信社)
「山菜・薬草 山の幸利用百科」(大沢章、農文協)
「ひと目でわかる 山菜・野草の見分け方・食べ方」(PHP研究所)
「山渓名前図鑑 野草の名前」(高橋勝雄、山と渓谷社)
「読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
「山菜ガイドブック」(山口昭彦、永岡書店)
「山菜採りナビ図鑑」(大海淳、大泉書店)
「日本の山菜100 山から海まで完全実食」(加藤真也、栃の葉書房)
「山菜と木の実の図鑑」(おくやまひさし、ポプラ社)
「採って食べる 山菜、木の実」(橋本郁三、信濃毎日新聞社)
「おいしく食べる山菜・野草」(世界文化社) |