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昆虫シリーズ64 コガネムシ、ゴミムシ、ダンゴムシ

  • コガネムシの仲間
     コガネムシの仲間の多くは植物の葉を食べるが、他に花びらを好む種や動物の糞を専門に食べる種もいる。夕方から夜にかけて活動する種が多いが、マメコガネのように昼間活動するものもいる。「コガネムシは金持ちだ~」という歌があるとおり、金緑色のコガネムシや宝石のようなキンスジコガネは、美しい金属光沢をもっている。ただし、コガネムシの仲間は、夜行性で地味な色彩をしているものが多い。(写真:キンスジコガネ)
  • コガネムシの仲間のうち別途掲載している種・・・カブトムシ、糞虫、ハナムグリ、カナブン、オサムシの仲間(オオアトボシアオゴミムシ、オオスナハラゴミムシ、ホソヒラタゴミムシ)
  • コガネムシ(コガネムシ科)
     コガネムシは、漢字で「黄金虫」と書くとおり、この仲間の中で最も輝きが強く美しい。体は光沢の強い金属緑色か、稀に赤紫、黒紫のものなどがある。上ハネに小さな点刻の列がある。クヌギ、サクラなど広葉樹の葉を食べる。産卵は、落ち葉や有機物などの多い土中に卵を数粒ずつ産み付ける。
  • 参考動画:カナブンとコガネムシの見分け方〜身近な虫の名前を覚えよう2〜 - YouTube
  • 幼虫・・・ふ化した幼虫は土中で植物の根を食べるので、「ジムシ」や「根切虫」とも呼ばれている。害虫扱い。幼虫で越冬する。
  • 体長 17~23mm。 
  • 成虫は、6~7月に現れる。北海道から九州まで分布。 
  • アオドウガネ(コガネムシ科)
     背面の体色は、緑色の鈍い金属光沢をもち、体表面に微細な点刻がある。腹下面は、一様に長い毛で覆われる。ドウガネブイブイに似ているが、前ハネの側縁を縁取るように走る隆起線がハネ端に達する点で識別できる。捕まえると糞をするらしい。沿岸部の広葉樹林に多く見られる。公園や庭などのサクラ類やアジサイ類の葉にも見られる。しばしば大発生する。明かりにもよく飛来する。暖かい地方に多い昆虫で、本州中部地方以西に分布。近年、分布を北に広げているという。 
  • 参考動画:【ASMR】アオドウガネの交尾行動① - YouTube
  • 体長 18~25mm。 
  • 成虫は、6~10月に現れる。
  • 宝石のようなキンスジコガネ(コガネムシ科)
     高地のカラマツ林に生息している美麗種。背面は、深いメタリックグリーンで、粒状の凹凸がある。前ハネは、縦の隆起線が目立つ。成虫は針葉樹の葉、幼虫は根を食害する。北海道から九州まで分布。
  • 体長 17~19mm。成虫は、6~9月に現れる。
  • ムネアカセンチコガネ(コガネムシ科)
     糞虫の仲間だが、食性は糞ではなくカビの仲間を食べる菌食性。赤色と黒色の模様が特徴。胸と各脚、前ハネ前方半分ほどが赤色で目立つ。芝地で見られ、都市公園にも生息している。明かりにもしばしば飛来する。
  • 参考動画:ムネアカセンチコガネ、土にもぐる - YouTube
  • 体長 9~14mm。
  • 成虫は、5~10月に現れる。北海道から九州まで分布。
  • マメコガネ(コガネムシ科)
     小型のコガネムシで、イタドリやクズなどのマメ科植物などの葉やクリなどの花に集まる普通種。林縁や草地、川の土手など広域で見られる。1920年代、北アメリカに侵入、大繁殖して果樹に大被害を与え、ジャパニーズ・ビートルと呼ばれ恐れられたことがある。幼虫は、土の中の植物の根を食べて育つ。農作物、苗木などに被害を与えることもある。花壇の花も食い荒らすことがある。
  • どくとるマンボウ昆虫記・・・ジャパニーズ・ビートル
     人間はいろんな植物を輸送し、同時にその害虫をも輸送する。元の産地では種々の天敵がいるため繁殖を抑えられている昆虫も、天敵のいない外国では大発生をみることが少なくない。マメコガネは日本では八種の寄生昆虫をもっている。しかしこの種がかつて北米に渡った時、農作物に与えた被害は甚大で、ジャパニーズ・ビートルというあだ名までもらった。風船爆弾なんぞより遥かに甚大な被害を与えたのである。
  • 参考動画:マメコガネ/ガイコツ山 - YouTube
  • 体長 9~13mm
  • 成虫は、5~10月に現れる。全国に分布。
  • 害虫・・・幼虫は芝草やイチゴ、イモ類の根を食害する。成虫は、マメ類やイチゴの葉を食害する。  
  • 交尾・産卵・・・エサとなる植物の葉の上で盛んに摂食・交尾し、夕方に芝などに潜って産卵する。 
  • 集団・・・昼間、1枚の葉に複数の個体が集まって葉を食べたり、交尾したりしていることが多い。
  • 成虫の天敵・・・鳥類やムシヒキアブなど。
  • セマダラコガネ(コガネムシ科)
     日本各地で見られる普通種で、背中に黒い斑模様がある。幼虫が芝草の根を食べることから、ゴルフ場の芝生に本種が大発生し、甚大な被害を与えた例がある。北アメリカに侵入し、芝生の害虫として知られている。 
  • 参考動画:セマダラコガネ - YouTube
  • 体長9~13mm。 
  • 成虫は、6~8月に現れる。琉球列島を除く全国に分布。
  • アシナガコガネ(コガネムシ科)
     名前のとおり、コガネムシの中では後ろ足が極端に長いのが特徴。背面は、淡い緑黄色か黄色で、前胸背の周辺部は光沢があり、腹面は淡い緑黄色で、光沢のある鱗片に被われる。触角の先端が枝分かれしている。昼行性で、クリやノリウツギなどの樹木の花や花壇の花に群がる。密集して花粉や花弁を貪り食うので、木の花が丸坊主になることもあるという。 
  • 参考動画:アシナガコガネ2021 - YouTube
  • 体長 5.5~9mm。 
  • 成虫は、5月に平地の芝生近くの花に集まる。本州から九州、佐渡、伊豆諸島、屋久島に分布。
  • ビロードコガネ(コガネムシ科)・・・黒い体色にビロード状の微毛をもつコガネムシ。
  • 参考動画:ヒメビロードコガネ/ガイコツ山 - YouTube
  • 体長 8~9.5mm。成虫は、4~10月に現れる。北海道から九州・対馬に分布。
  • ヒメビロードコガネ(コガネムシ科)・・・小形のビロードコガネ。日中、草や木の葉の上、花の上で見られ、夜間は灯火にもやってくる。成虫は、4月~11月に見られる。北海道~沖縄まで分布。
  • コフキコガネ(コガネムシ科)・・・全体に灰黄色の体毛があり、粉を吹いたような大型のコガネムシ。頭楯は、♂ではやや、♀は明瞭に前方向に向かい狭くなる。♀の触角は小さいが、♂では触角の片状部が大きく発達している。コナラ、クヌギなどの葉を食べる。体長25~31mm。6~9月に現れる。本州、伊豆諸島に分布。
  • ドウガネブイブイ(コガネムシ科)・・・背面は銅色~銅褐色の中形のコガネムシ。前ハネに隆起線はなく、腹部下面に長い毛が密生する。広葉樹林や果樹園、公園などでも見られ、各地で普通に見られる。クリの花やブドウの実、サクラ類の葉などを食べる。体長17~25mm。5~10月に現れる。全国に分布。
  • 参考動画:花を食べるドウガネブイブイ - YouTube
  • ヒラタアオコガネ(コガネムシ科)・・・緑色の小型コガネムシ。腹部・胸部の周りに白い毛が良く目立つ。成虫は、比較的早く4~5月頃に現れる。幼虫は芝の根や腐植を食べ、成虫は芝草の上を低く飛翔する。成虫で越冬する。
  • 体長 9.5~12mm。本州から九州・奄美まで分布。
  • 参考動画:ヒラタアオコガネ - YouTube
  • シロスジコガネ(コガネムシ科)・・・白い縦筋が特徴の大型のコガネムシ。幼虫は海岸などの砂地で育ち、成虫は明かりにもしばしば飛来する。北海道から九州、佐渡島から屋久島などの島々に分布。(写真出典:シロスジコガネ | E-M5, SIGMA 150mm Macro | nubobo | Flickr)
  • コカブトムシ・・・広葉樹林で見られ、様々な朽木の内部にいるほか、明かりにも飛来する。♂は頭に短い角をもち、前胸の中央が丸く凹んでいるのに対し、♀は細長く凹んでいる。カブトムシは樹液に集まるのに対し、コカブトムシはミミズやイモムシなどを食べる肉食。大きな角もなく、体も小さいため、カブトムシと思わない人がほとんど。成長が早く、幼虫期間は約2ヵ月で成虫になる。だから年に2、3回発生し、成虫で越冬することができる。飼育下なら、2年ほど生きることもあるという。
  • ゴミムシの仲間・・・オサムシ科の甲虫で、5~20mmくらいの大きさのものが多い。地上を俊敏に歩行するが、飛べるものも多い。昼間は石の下やワラの下などに隠れているものが多い。(写真:アトボシアオゴミムシ)
  • 摂氏100℃の「おなら」をするミイデラゴミムシ(オサムシ科)
     体長2cmほどのゴミムシの仲間だが、別名「屁っぴり虫」とも呼ばれ、「おなら」をする昆虫として有名。この虫の出す「おなら」は、「ブー」という音とともに煙が出る。その煙は、摂氏100℃もの高温で、自由自在に出す角度を調整でき、敵に噴射する。さらに何回も連続して噴射できる。人の指に当たると、強力な臭いと茶色いシミを残す。シミは軽いやけどのように皮がむけることさえあるという。鳥やカエルが間違えて捕食しようものなら、相当痛い目にあうこと間違いなしだろう。 他に屁っぴり虫は、オオホソクビゴミムシ、コホソクビゴミムシなどがいる。
  • 写真提供:HP「とある虫屋のむし写し(ミイデラゴミムシ)
  • 参考動画:ミイデラゴミムシとキイロサシガメの対カエル防衛- YouTube
  • 強烈な毒ガスのつくられ方・・・ミイデラゴミムシの腹部には、ヒドロキノンと過酸化水素という二つの化学物質を貯蔵する袋がある。危険を感じると、その二つの化学物質を腹部先端の小さな部屋に流し込み、そこで酵素が反応し、爆発する。その時発生する強烈な臭いは、新たに合成されたベンギゾキノンの臭いである。ミイデラゴミムシは、そんな複雑な化学合成を一瞬、かつ何回も連続して行うことができるという「おなら=毒ガス」の達人である。なお、この化学反応を起こし噴射させるシステムは、何とロケットの発射方法と同じだという。
  • 毒ガスは100℃の高温なのに自身は無害・・・ミイデラゴミムシの反応室の表面は、キチン質に覆われているので、自身に害はない。
  • 写真提供:HP「とある虫屋のむし写し(ミイデラゴミムシ) 
  • 参考動画:ミイデラゴミムシのガスの噴出_2@水前寺江津湖公園 - YouTube
  • ニジゴミムシダマシ(ゴミムシダマシ科)
     体はテントウムシ型で、虹色の金属光沢がある美麗種。ハネに点々の縦筋がある。見る方向によって金色や虹色にキラキラ輝くのに、なぜか夜行性で暗い所に生息しているから、全く目立たない。広葉樹の枯れ木で見られ、キノコを食べる。
  • 参考動画:【GH6 4K60P】ニジゴミムシダマシ【HDR】 - YouTube
  • 体長 6~7mm。全国に分布。
  • ナガニジゴミムシダマシ・・・テントウムシのように丸いとニジゴミムシダマシだが、本種は細長いので識別できる。虹色の金属光沢があり、条溝に点刻列がある。枯れ木に生えるキノコを食べる。体長約10mm。本州から沖縄まで生息。
  • キマワリ(ゴミムシダマシ科)・・・黒色ないし黒藍色で、上ハネには点刻を含む明らかな条溝を有している。平地から山地の林で見られ、立ち枯れ木や薪などに集まる。日中、樹皮の上を活発に動き回る。♂の体形は細く、♀はやや幅広い。
  • 参考動画:No.11 キマワリ 〜知れば外歩きが100倍楽しくなる!身近な昆虫の特徴紹介〜 - YouTube
  • 体長 16~20mm。
  • 成虫は、4~6月に現れる。全国に分布。
  • オオクチキムシ(ゴミムシダマシ科)・・・光沢のない黒色で、上ハネに縦筋がある。脚が長くて赤いのが特徴。雑木林の朽木で見つかる。クチキムシの仲間は、朽木やキノコで見つかるものが多い。幼虫も朽木に棲む。成虫はキノコ類、幼虫は朽木を食べる。体長12~15.5mm。
  • アオハムシダマシ(ゴミムシダマシ科)・・・メタリック系の美しい甲虫。平地から低山地の野草の生える草原や緑地、雑木林に生息する。細長い筒状をした体は、頭部から胸部、腹部に至るまで金属的な光沢のある鮮やかな緑色をしている。コガクウツギ、リョウブなどの花の蜜を主な餌としている。体長9~12mm。4~6月に現れる。本州以南に分布。
  • アカハネムシ類(アカハネムシ科)・・・ハネが赤いのが特徴。類似種とは、触角の形などで識別するが難しい。従ってアカハネムシ類とする。広葉樹林周辺で見られ、しばしば飛翔する。各地で普通。体長11.5~17mm。4~6月に現れる。全国に分布。
  • ダンゴムシの仲間(甲殻類)・・・昆虫ではない点に注意
     昆虫ではなく、エビやカニなどと同じ甲殻類。脚は7対14本。庭先の石や植木鉢の下には、オカダンゴムシやワラジムシがいる。海辺では、ハマダンゴムシやフナムシが見られる。これらの陸生甲殻類は卵胎生で、♀が腹部に保育のうをもっている。産まれた卵は2週間ほどでふ化する。ふ化した子は、保育のうを覆う薄い膜を破って外に這い出し、脱皮する。しばらく親の周りにいるが、次第にエサを求めて離れてゆく。
  • 名前の由来・・・刺激を受けると、腹面を内側に丸まり、ほぼ完全な球形になる。これが「団子のような虫」の由来である。
  • ダンゴムシの交尾
  • 落ち葉を分解するオカダンゴムシ・・・オカダンゴムシは、地面の落ち葉を食べ、第一分解者として土づくりに参加している。落ち葉の表面から食べ始め、次に葉身を食べる。最後に固い主脈だけが残される。こうして食べられ消化された落ち葉は、糞として排出される。糞は、さらに小さな土壌動物のエサとなり、その糞を微生物が食べる。こうして落ち葉の分解が進み、土にかえる。
  • ワラジムシ・・・ダンゴムシに似ているが、丸くならない。
  • ワラジムシとは・・・カニやエビと同じ甲殻類で、ダンゴムシと同じくワラジムシ科に属する陸生種。日本では約100種が知られている。脚は7対、14本。お尻にある短い角のような二本の尻尾がよく目立つ。湿った場所を好み、石の下や朽木、落ち葉の中にいる。主に夜活動し、春・秋の暖かい時期に繁殖する。♀の育房でふ化し、親そっくりの姿になってから外に出る卵胎生。
参 考 文 献
  • 「大自然のふしぎ 昆虫の生態図鑑」(Gakken)
  • 「原色昆虫図鑑Ⅱ甲虫他」(北隆館)
  • 「ポケット図鑑 日本の昆虫1400」(槐真史、文一総合出版)
  • 「身近な昆虫のふしぎ」(海野和男、サイエンス・アイ新書)
  • 「くらべてわかる甲虫」(阿部浩志ほか、山と渓谷社)
  • 「虫の顔」(石井誠、八坂書房)
  • 「コンパクト版16 原色昆虫図鑑」(北隆館)
  • 「どくとるマンボウ昆虫記」(北杜夫、新潮文庫)
  • 「昆虫はすごい」(丸山宗利、光文社新書) 
  • 「昆虫たちのやばい生き方図鑑」(須田研司、日本文芸社)
  • 参考HP「とある虫屋のむし写し