樹木シリーズ93 ムクゲ
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- 上に直線的に伸び大輪の花を咲かせるムクゲ(木槿、アオイ科)
中国原産と言われているが、原産国不明説もある。自生しない韓国では白花のムクゲが国花になっている。日本でも奈良時代から栽培され、多くの人に親しまれている。大輪の花びらは5枚だが、八重咲品種もある。花色は、紅紫色からピンク、白と多彩で、花の中心部が紅色に染まるものが多い。庭木や鉢植え、生け垣、花材などに利用される。
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- 名前の由来・・・中国名は「木槿」で、その「木槿(もくきん)」が転じたとする説と、韓国名の「無窮花」(ムグンファ、ムキュウゲ)が転じたとする説がある。
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- 学名・・・ハイビスカス・シリアカス。植物学者リンネがシリア原産と間違ってつけたもので、実際にはシリアに自生していない。
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- 花・・・紅紫色が普通だが、白花や八重咲など多くの園芸品種がある。花弁は5個。多数の雄しべは合着して筒状になる。
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- 葉・・・互生し、浅く3つに裂けるが、裂けないタイプもある。縁には粗い鋸歯がある。基部から伸びる三行脈が目立つ。
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- 樹皮・・・木の肌が灰色で、枝がまっすぐに立つ性質がある。
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- 南国の雰囲気・・・同属のハイビスカスに似て、南国の雰囲気がある。
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- 一日花だが・・・「槿花一朝の夢」という言葉は、ムクゲが一日花であることに由来すると言われている。咲きはじめの梅雨明けなどでは夕方閉じて終わるものもあるが、初秋に咲く花はたいてい2~3日咲いている。
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- 大きい虫を呼び込む花・・・大きめの虫に合わせた花のつくりをしている。中心の赤い模様は、蜜への入口を示す矢印。昼行性の蛾・オオスカシバやホウジャクが蜜を吸い花粉を運ぶ。
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- 例:ムクゲとキアゲハ・・・これから開こうとするピンク系の花に、キアゲハがやってきた。
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- まだ開き切らない花にも・・・待ちきれず、体全体を突っ込んで蜜を吸っていた。
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- 樹形・・・枝が上へ直線的に伸びる独特の樹形で、汚れた空気に強く丈夫なことから街路樹としても植えられる。
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- ソウタンムクゲ(宗旦木槿)・・・白色だが、中心部が赤い。
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- 垣根などを刈り込んだ後に出た若枝の皮は非常に強い。昔は、下駄の鼻緒を切らしたとき、この皮を使ってたてた。
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- 道の辺の木槿は馬に喰はれけり 芭蕉(野ざらし紀行)
- それがしも その日暮らしぞ花木槿 一茶
- 言ふほどにさびしさあらぬ花木槿 上田五千石
- 旅立ちの花も木槿と決めてをり 田中裕明
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- シロバナムクゲ(白花木槿)の歌・・・「雨はれて心すがしくなりにけり窓より見ゆる白木槿(しろむくげ)のはな」(斎藤茂吉、第二歌集「あらたま」)
- 白木槿嬰児も空を見ることあり 細見綾子
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参 考 文 献 |
- 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
- 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
- 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
- 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)
- 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
- 「秋田農村歳時記」(ぬめひろし、秋田文化出版)
- 「季語 早引き辞典 植物編」(監修 宗田安正、学研)
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