樹木シリーズ83 ナニワズ
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- 早春、春爛漫の花園に咲くナニワズ(ジンチョウゲ科)
北海道と本州中部以北に生える雌雄異株の落葉低木。高木がまだ葉を開く前の早春、林床には太陽の光が降り注ぐ。カタクリやキクザキイチゲなどが林床一面に咲き誇るが、その中に混じって黄色い花をたくさん咲かせる。夏には、葉が落ち、赤い実だけ茎に付ける。葉や枝には毒があり、実も食べられない。
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▲ナニワズ |
▲オニシバリ |
- 福島県以西に分布するオニシバリとの見分け方・・・ナニワズの花は鮮やかな黄色だが、オニシバリは薄い黄緑色をしているなど、花の色、香り、花序の形も異なるので、花で見分ける。
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- 名前の由来・・・長野県の方言で「オニシバリ」を「ナニワズ」と呼んでいた。たまたま長野県人が北海道でこの木を見て「ナニワズ」と呼んだのが始まりといわれている。
なお、オニシバリの名前は、非常に強い樹皮であることから「鬼も縛ることができる」と例えられたことによる。
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- 別名エゾオニシバリ、ナツボウズ・・・樹皮が丈夫で鬼をも縛れることから「エゾオニシバリ」ともいわれる。他にナツボウズは、夏に葉が落ちることからつけられた。別名オニナニワズともいう
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- 高さ50㎝ほどの株立ちになる落葉小低木で、本州中部から南樺太まで分布。枝は灰茶色で太くまばらに分かれる。
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- 雪国の落葉広葉樹林に生え、早春に香り高い花が咲く。
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- 花・・・枝先に小さな花が多数集まってつく。ガクは黄色の筒形で先は4裂する。雄花より雌花の方が小型で、色合いが若干緑がかっている。
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- 葉・・・互生し、長さ4~8cmの倒披針形で先端は丸く、基部は楔形。縁は全縁。質は薄くてやわらかく、裏面はやや粉白色を帯びる。
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- 豪雪地帯に適応した低木・ナニワズ・・・雪が降ると地に伏しているが、雪が消えるとネマガリダケのように起き上がる。森がまだ芽吹く前は、林床に光が最大限降り注ぐ。その間、冬緑樹の葉で盛んに光合成を行い、黄色い花をたくさん咲かせる。高木の森が深い葉に包まれる夏になると、落葉して赤い実をつける。一般の植物とは、逆の戦略で分布を拡大してきたオモシロイ樹木である。
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- 「春のはかない草花」(スプリングエフェメラル)たちと咲き競うナニワズ
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- 右上図:菅江真澄絵図「蝦夷・いるか漁」(秋田県立博物館蔵写本)
- 有毒植物・・・アイヌの人々は、この木を煎じて作った汁をモリに塗り、矢毒として「トド猟」などに使っていた。「北海道」の名付け親・松浦武四郎は「夏坊主という木は毒草で、アイヌ人はこの木を煎じて汁をモリに塗り、トド猟に使っているがどんな大きなトドでも一本で死ぬ。」と日誌に記している。
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参 考 文 献 |
- 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
- 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
- 「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
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