樹木シリーズ55 ナツツバキ
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- 夏に咲き、無常観を象徴するナツツバキ(夏椿、ツバキ科)
宮城・新潟以西の山地に生える落葉高木。生長するにつれて樹皮が剥がれて独特の斑模様になる。夏に白い大きな花を咲かせる。ツバキは冬も落葉しないが、ナツツバキは落葉樹で、冬には全ての葉を落とす。木肌、花ともに美しいのでよく庭に植えられる。別名シャラノキと呼ばれている。
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- 名前の由来・・・夏にツバキのような花を咲かせることが名の由来。釈迦ゆかりの沙羅双樹に例えられて「沙羅の木」とも呼ばれている。
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- 樹皮・・・幹は、成長とともに表皮が薄く剥がれ落ち、サルスベリやリョウブのように独特の斑模様になる。その滑らかな斑模様が美しいことから、皮つきのまま床柱として、日本間、特に茶室に使われることがある。
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- 独特の斑模様からついた地方名・・・サルスベリと同じく、木登り上手なサルさえ滑り落ちると思わせるほどツルツルしていることから、サルスベリ、サルナメ、サルタなどと呼ばれている。
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- 花・・・葉腋に直径5~6cmの大きな白い花を開く。花弁は5個で、縁に細かい鋸歯がある。花の下には、ガク片より短い2個の苞がある。
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- 虫媒花・・・主として昆虫を媒介して受粉を行う虫媒花。花が大きいので、虫だけでなく鳥も媒花する鳥媒花という人もいるが、その瞬間を見たことがないので真偽のほどは分からない。
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- 一日花・・・朝に開くと、夜までにはボトリと落ちてしまう一日花。 花よりもツボミが多く、落ちては次から次へと咲き続ける。
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- 葉・・・ツバキのような厚みはなく、長さ10cmほどの楕円形で裏面には伏毛が生える。葉脈は表で窪み、裏で浮き出る。葉先は短く出る。
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- 蒴果・・・木質で長さ1.5~2cmの先の尖った卵形で、熟すと5裂する。
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- 茶花として人気・・・花弁はバラバラにならずに散る。この白い花は、侘び寂びを感じさせる茶花として人気がある。だから昔から茶花として茶庭に植えられた。
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- 無常観を象徴する木・・・「平家物語」巻頭の一節
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし
たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ
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- 森鴎外の詩・・・褐色の根府川石の/白き花はたと落ちたり/ありとしも青葉がくれに/見えざりしさらの木の花
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- 俳句
散り敷いて一際白し夏椿 豊田麗水
ぽとぽと散る塀のうちそと夏椿 松崎鉄之介
葉を落とし幹美しき夏椿 加藤君子
さびさびと落ちて深山の夏椿 今井妙子
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参 考 文 献 |
- 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
- 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
- 「図説 日本の樹木」(鈴木和夫・福田健二、朝倉書店)
- 「樹木 見分けのポイント図鑑」(講談社)
- 「゛読む゛植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
- 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
- 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)
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