樹木シリーズ205 ボタン(牡丹)
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- 大輪の花を咲かせる「百花の王」・ボタン(牡丹、ボタン科)
大輪の見事な花を咲かせるボタンは、中国北西部の原産で、初めは薬用として栽培されていたが、6~7世紀頃から園芸品種がつくられるようになった。日本へは、天平時代(729~749年)に渡来したと言われている。江戸時代には、既に160種以上の品種が知れていた。観賞用に多くの品種がつくられ、八重、千重、万重咲もの、花の色も白、黄色、紅色、ピンクなど多彩。台湾の国花。
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- 別名ハツカグサ・・・白楽天の長編詩「牡丹芳」では、咲いて散るまで二十日間、長安の人はボタンに狂ってしまうという意味の詩があり、至る所で園遊会、品評会が開かれ、全都がボタンに満ち溢れたという。この詩から、別名ハツカグサと呼ばれている。
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- 中国の別名・・・百花王、花王、花神、富貴花と呼んできた。
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- 葉・・・2回3出羽状複葉で互生する。小葉は卵形~卵状披針形で、先端は2~3裂し、裂片の先は尖る。裏面は白っぽい。
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- 花・・・今年伸びた枝の先に直径15~20cmの大きな美しい花を1個咲かせる。花の色は、白、紫、紅色、淡紅色、黄色など色々。花弁は8~多数。雄しべは多数あり、雌しべは2~5個で、基部を袋状になった花盤が取り囲む。
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- 変種・寒牡丹・・・初夏と冬に開花する二季咲きの性質があり、「わらづと」の中で咲く花も風情がある。
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- 日本への渡来・・・天平時代(729~749年)と言われているが、空海が持ち帰ったという言い伝えもある。
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- 江戸時代・・・ボタン栽培が庶民にも広がった。特に元禄年間にはボタンブームが起こり、盛んに品種改良された。
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- ボタンの名所・・・奈良の長谷寺(上写真)、當麻(たいま)寺などが名高い。長谷寺には、元禄時代に植えられたものも伝えられ、山門、回廊、本堂の周りに7千株もあるという。
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- 薬用・・・初めは花の鑑賞ではなく、根を鎮痛、消炎などの薬用に用いていた。
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- 「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花」・・・直立した花の先に花を咲かせるシャクヤクは美人の立ち姿に対して、横張りの樹形のボタンは座り姿の美人に例えている。
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- 俳句・・・牡丹は夏の季語
ちりて後おもかげにたつぼたん哉 蕪村
牡丹散りて打ちかさなりぬ二三片 蕪村
牡丹百二百三百門一つ 阿波野青畝
白牡丹といふといへども紅ほのか 高浜虚子
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参 考 文 献 |
- 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
- 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)
- 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
- 「別冊NHK はじめておぼえる季語100」(NHK出版)
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