樹木シリーズ202 シキミ(コウノキ、ハナノキ)
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- 寺でよくみる香りの木・シキミ(樒、シキミ科)
暖地(東北地方南部以南~九州・沖縄)に自生し、寺院や墓地によく植えられる。早春に咲く花は、ろう細工のような透明感があって美しい。この木の枝を墓前に供える風習がある。常緑の葉は、ちぎると良い香りがする。全体が有毒だが、枝葉の粉末は、抹香や線香の原料に使われる。暖地の山地に自生もある。繁殖は実生による。陰樹のため、日陰地でもよく育つ。
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- 名前の由来・・・有害な実から「悪しき実」のアが抜けたとの説や、葉の茂り方から繁芽木(しきめき)が転じた説、四季に芽が出ることから「四季芽」が転じたなどの説がある。
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- 樒・・・仏事に使用されることが多い樹木で、漢字では「木」偏に「密」と書く。密教と関係があることからついたとする説もある。
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- 別名コウノキ、ハナノキ・・・枝葉を折ると、かなりの香気があるので、別名香の木(コウノキ)と呼ばれている。また花の代わりに墓前などに供えることから、ハナノキとも呼ばれている。
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- 葉・・・互生し、枝先に集まってつく。倒卵状広披針形で厚く滑らか。側脈はあまり見えない。裏は葉脈が見えない。見分けの決め手は、ちぎると甘い香りがする。
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- 花・・・早春に淡い黄白色の花が咲く。花弁とガク片は、共に線状披針形で12個。雄しべは20個。
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- 花弁は6枚、ガク片も6枚で、共に同形なので12枚の花弁のように見える。
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- 果実・・・8~12個の袋果が星形に並ぶ。9~10月に熟すと裂け、猛毒の種子を出す。
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- 星形に裂けた果皮は、中国食材の「八角(スターアニス)」(上の写真)にそっくり。八角は、同属のトウシキミの果皮で、インフルエンザの特効薬タミフルの原料として脚光を浴びた。シキミにも含まれるが、猛毒も含むので医薬には使われていない。
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- 木全体が有毒・・・種子だけでなく木全体が有毒で、墓地に植えたり、枝葉を仏前に供えたりするのは、獣が墓を荒らすのを防ぐためだと言われている。
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- シキミには香気があるので、不浄を除くと考えられていたため、昔はサカキと同じように神事にも使われた。仏教が伝わると、神事にはサカキ、仏事にはシキミになったと言われている。
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- 誤食事故・・・1990年11月、兵庫県・児童の自然教室の時、山で拾ったシイノキの実(シキミの実が混じったもの)を混ぜたパンケーキを作り、それを食べて下痢、嘔吐、全身のけいれんを起こし、15人中12人が入院という事故があった。こうした誤食事故はかなりあるという。
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参 考 文 献 |
- 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
- 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
- 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)
- 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
- 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
- 「樹木医が教える 緑化樹木事典」(誠文堂新光社)
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