樹木シリーズ197 サザンカ
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- 晩秋から咲き始めるサザンカ(山茶花、ツバキ科)
ツバキと並んで日本の美しい花木で、日本各地で庭木や生け垣に利用されている。晩秋から冬にかけて咲き、野生では白い花をつけ、メジロやヒヨドリが蜜をなめに集まってくる。ヤブツバキと似ているが、ヤブツバキの花は丸ごと落ちるが、本種は花弁が1枚ずつ散るという違いがある。種子からは油が採れ、ヤブツバキと同じように利用される。葉はヤブツバキより小さく、葉先がくぼむことで見分けられる。園芸品種には、赤やピンク色、八重咲など様々で、晩秋から春にかけて長く華やかに咲く。四国(西南部)、九州、沖縄に分布。
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- サザンカとヤブツバキの主な違い(写真上右下はツバキ)
- サザンカの原種は白花で一般に秋咲き。ヤブツバキは紅色花で春咲き。
- サザンカの雄しべは1本1本が分離し、子房には毛が密生、花弁はバラバラに散る。ツバキの雄しべはくっついて筒状になり、子房は無毛、散るときは丸ごと落ちる。
- サザンカの葉柄には毛があるが、ツバキには毛がない。
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- 名前の由来・・・中国語でツバキ類一般を指す山茶に由来し、「山茶花」と書く。その本来の読みである「サンサカ」が訛って、「サザンカ」と呼ぶようになったと言われている。
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- 葉・・・葉は互生し、光沢がある。縁には細かい鋸歯がある。葉を光にかざすと、ツバキは葉脈が白く透けるが、本種は透けない。
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- 寒さに弱い暖地系・・・晩秋から初冬に花を咲かせるものの、寒さに弱い性質は、九州や四国の一部にしか分布しないことでも分かる。サザンカの花芽は、秋に成長する過程で急な冷え込みに遭うと落下してしまうという。
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- 真冬でも花を咲かせるサザンカ・・・品種改良によって、雪が降る真冬でも花を咲かせるようになったのは最近のこと。
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- サザンカの花芽は、冬に休眠しない。花芽は、6~7月につくられるが、その後休眠することなく、秋に成長して初冬に開花する。ただし、残暑が厳しい年は、開花が遅れるという。
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- 毒毛虫「チャドクガ」・・・チャドクガは、常緑のチャノキだけでなく、サザンカやツバキの葉に卵を産み、越冬して年二回幼虫が発生する。
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- なぜ晩秋から初冬に花を咲かせるのか
多くの樹木は、春から初夏に花を咲かせるのに対して、晩秋から初冬に花を咲かせるサザンカは少数派である。それだけ蜜を多く出すサザンカは、メジロやヒヨドリ、ハナアブなど花粉を運んでくれる鳥や虫をたくさん集めることができる。さらに他種の花粉で受粉を妨害されない利点もある。
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- 童謡「たきび」・・・さざんか さざんか 咲いた道/たき火だ たき火だ おちばたき/あたろうか あたろうよ/しもやけ お手々が もうかゆい
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参 考 文 献 |
- 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
- 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
- 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
- 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
- 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)
- 「樹木19種の個性と生き残り戦略/アジサイはなぜ葉にアルミ毒をためるのか」(渡辺一夫、築地書館)
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