昆虫シリーズ75 世界の昆虫④ 世界のクワガタムシ
クワガタは、環境や気候に適応する能力が優れた昆虫で、世界には約1,200種以上と多く、カラフルで大型のクワガタが生息している。北の寒い地方や標高の高い山地など、生息域も世界各地に分布している。その中でも種類が断トツ多いのは、東南アジアで、約800種が生息している。東南アジアは「クワガタムシの楽園」と呼ばれている。その理由は、クワガタムシの幼虫が朽木を食べるが、それと競合するコガネムシが少ないことと、たくさんの島々があるため、島ごとに固有の種が暮らしているからである。
INDEX ニジイロクワガタ、パプアキンイロクワガタ、キンイロクワガタの仲間、パラワンオオヒラタクワガタ、スマトラオオヒラタクワガタ、アルキデスヒラタクワガタ、ヒラタクワガタの仲間、ギラファノコギリクワガタ、アスタコイデスノコギリクワガタ、ファブリースノコギリクワガタ、マンディブラリスフタマタクワガタ、セアカフタマタクワガタ、フタマタクワガタの仲間、タランドゥスオオツヤクワガタ、レギウスオオツヤクワガタ、オウゴンオニクワガタ、東南アジアのクワガタ、オオクワガタ、アンタエウスオオクワガタ、日本産オオクワガタ、マルバネクワガタ、ミヤマクワガタの仲間、メタリフェルホソアカクワガタ、エラフスホソアカクワガタ、チリクワガタ、フェイスタメルシワバネクワガタ
ニジイロクワガタ (オーストラリア)・・・際立つメタリックの輝きは、世界で一番美しいクワガタと言われ、人気が高い。以前は高価だったが、繁殖が容易なこともあって、安価でポピュラーな種になっているという。サナギの段階では、大アゴが丸まっているが、羽化と同時にアゴが伸びてくるといった変わった変態をする。
ニジイロクワガタは、背中よりも腹部の方が金属光沢が強い。
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参考動画:ニジイロクワガタの闘い /海野和男 - YouTube
パプアキンイロクワガタ (ニューギニア)・・・赤や紫、オレンジ、緑、青など色彩変異が豊富な小型種。成虫の寿命は約6カ月と短いが、次々と産まれる新成虫のの色彩を楽しめる。本種は昼行性で、草の汁を吸うことが知られている。
キンイロクワガタの仲間 (オセアニア)・・・オーストラリアやニューギニアに分布するクワガタムシは、金緑色の強い光沢をもつ。
パラワンオオヒラタクワガタ (フィリピン)・・・世界最大のヒラタクワガタ。野生個体のギネスサイズは110mm、重さは約20g。頭部と胸部が角ばっていて、表面は光沢がある。クワガタ相撲では常に上位に入るほど無類の強さを誇る。
強いが、気性も荒い ・・・生存競争が最も激しい東南アジアで生き抜くため、コーカサスオオカブトに劣らず気性も荒い。大アゴではさむ力はクワガタ界の中でも最強レベル。一度はさんだら、ノコギリのような歯をジワリと食い込ませ、なかなか離してくれない。意に沿わない♀でも容赦なく攻撃するという。
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参考動画:パラワンオオヒラタVSアルキデスヒラタ /海野和男 - YouTube
スマトラオオヒラタクワガタ (インドネシア)・・・世界最強のクワガタムシ。ヒラタクワガタの中で最も人気がある。横幅のあるボディは光沢があり美しい。太い大アゴの内歯はやや下方につく。見た目通りの強さは半端じゃない。太くて頑丈な大アゴは、捕まえたもの全てを破壊する。
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参考動画:スマトラオオヒラタクワガタ vs スラウェシオオヒラタクワガタ /海野和男 - YouTube
アルキデスヒラタクワガタ (スマトラ島)・・・アゴの力は、クワガタ界トップクラス。体の幅が広く、ガッチリしている。
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参考動画:アルキデスヒラタクワガタの闘い /海野和男 - YouTube
ヒラタクワガタの仲間 (東南アジア)・・・南の暖かい東南アジアを中心に多くの種が知られる。日本では、関西や九州では普通に見られる。黒色で、体は平べったく幅が広い。大アゴの内側基部寄りに発達した内歯があり、先は細かな小歯が連なる。東南アジア産のオオヒラタクワガタは、大型で人気が高く、毎年大量に輸入されている。大きいもので100mm以上もあるが、在来種・ヒラタクワガタと同じ種で、容易に交雑することから、遺伝子汚染が指摘されている。
ダイオウヒラタクワガタ (Dorcus Bucephalus、ジャワ島)・・・大きく湾曲した大アゴが特徴。体長90mm未満とオオヒラタクワガタより一回り小さいが、大アゴの力強さは最強。挟まれたら出血するので注意。
ギラファノコギリクワガタ (インドネシア)・・・世界最大・最長のノコギリクワガタ 。先端で内側に切れ込む長い大アゴが特徴で、体長110mmを超える個体も。長く鋭いアゴにはさまれたら、ひとたまりもない。気性も荒く、他の昆虫たちに恐れられている。幾つかの亜種があり、アゴの内歯の形状に違いがある。
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参考動画:ギラファVSパリーフタマタ /海野和男 - YouTube
アスタコイデスノコギリクワガタ (中国、台湾、インドネシア、インドほか)・・・国産ノコギリクワガタに似ているが、本種の方が赤みが強く、個体によっては黄色っぽいものもある。体長は70mmに達する大型種で、バランスのとれたスマートな体型。
ファブリースノコギリクワガタ (インドネシアなど)・・・下部に太く黒い斑紋が現れるのが特徴。艶のあるボディと明るめの体色がきれいなノコギリクワガタで、大きく成長する。最大90mm。
マンディブラリスフタマタクワガタ (インドネシア)・・・体長110mmを超える世界でも最長クラスのクワガタ。独特の大アゴが格好良く人気が高い。
凶暴さナンバー1 ・・・大きさでは、ギラファに次いで2番手だが、闘争心はナンバー1.下方向に弧を描くように伸びた大アゴは、規格外の大きさを誇り、先端が二又に分かれている。大アゴのはさむ力は、ペンチでギューッとはさむくらいのダメージを受ける。♀も強靭な大アゴを持ち、はさまれれば♂より痛く感じるという。
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参考動画:マンディブラリスフタマタクワガタVSパリーフタマタクワガタ /海野和男 - YouTube
東南アジアに多く生息し、ヤシの樹液が大好物。気性が荒く、他の大型クワガタやカブトムシにも果敢に戦いを挑む。大型になりやすく、パワーもある。
セアカフタマタクワガタ (マレー半島、インドネシアなど)・・・真っ赤な背中と大きく湾曲した二又に分かれたアゴがカッコイイ。♂は気性が荒く、♀を挟み殺すことがあるので要注意。
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参考動画:セアカフタマタクワガタ紹介MOV /海野和男 - YouTube
フタマタクワガタの仲間 (東南アジア)・・・大アゴの先端が二股になっているクワガタムシの仲間。特にセアカフタマタクワガタは、大型で朱色の美しいハネと立派なアゴをもつ。
タランドゥスオオツヤクワガタ (アフリカ中央部)・・・アフリカ最大のクワガタムシ。全身が真っ黒で、艶やかなボディと、短いが著しく湾曲した大アゴが特徴。とても気性が荒く、怒ると体をブルブル震わせて「ジー」という音を出す。
レギウスオオツヤクワガタ (カメルーン)・・・タランドゥスオオツヤクワガタの亜種。タランドゥに比べて、大アゴが直線的なのが本種の特徴。
オウゴンオニクワガタ (インドネシア、マレー半島ほか)・・・黄金色に光り輝く人気のクワガタ。産地によって大アゴの形状が異なる。
東南アジアのクワガタ ・・・前ハネの色は生きている時は黄色みのあるオレンジ色だが、死後は黄色味がなくなる。夜ではなく、昼間活動する。
オオクワガタ (東南アジア、日本)・・・日本にも分布する大型のクワガタムシで、大きさやキバの形に変異が多い。
クルビデンスオオクワガタ (中国、ベトナム、インドなど)・・・国産オオクワガタに最も近い種。特に大アゴがよく似ている。インド産とネパール産は大型個体になる可能性が高く、人気があるという。成虫は約2年生きる。
グランディスオオクワガタ (ラオス、インド、ミャンマー)・・・体長80mmを超える大型種で、自然下では90mmに達する。オオクワガタの中でも最大級で迫力がある。
アンタエウスオオクワガタ (中国、ベトナム、タイ、ネパール、インドなど)・・・大型化するインド産が大人気だという。同じインドでも地域によってさらに細分化されている。全長85mm。
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参考動画:グランディスオオクワガタvsアンタエウスオオクワガタ /海野和男 - YouTube
日本産オオクワガタ ・・・日本最大のクワガタムシで、自然では滅多にお目にかかれない激レア種。
マルバネクワガタ( 東南アジア、インド、日本)・・・中・小型の種類が多く、キバは余り発達していない。日本では、奄美群島以南の南西諸島に生息する。外国産のマルバネクワガタ10種は、日本産マルバネクワガタと交雑したり、食べ物やすみかを奪い合ったりする恐れがあることから、特定外来生物に指定されている。
ミヤマクワガタの仲間 (インド、ヒマラヤ、中国西部)・・・世界に約60種が知られている。幼虫は朽木を食べ、成虫は雑木林の樹液や夜間光に集まる。
ヘルマンミヤマクワガタ (i中国)・・・頭楯が長く前方に伸びるユニークな種類。ミヤマクワガタの中では飼育が簡単。中国産は、福建省と雲南省での採集個体がほとんどだったが、最近では採集エリアが広がり、新種や亜種が続々発見されているという。
メタリフェルホソアカクワガタ (インドネシア)・・・長いアゴが人気のクワガタムシ。体の半分以上がアゴで、グリーン、ブルー、ブラウンと色んな金属光沢がが凄くカッコイイ。全長98mm。
エラフスホソアカクワガタ (インドネシア・スマトラ島)・・・スマートで、かつ光の当たり具合でメタリックグリーンに輝く体型、大きく内側に湾曲した大アゴが魅力で人気が高い。全長103mm。(写真出典:Wikimedia Commons )
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参考動画:メタリフェルホソアカクワガタvsエラフスホソアカクワガタ /海野和男 - YouTube
チリクワガタ (チリ、アルゼンチン)・・・長く特異な形状の大アゴが特徴。ナンキョクブナの森にすみ、大きな木の樹液に集まる。南米最大のクワガタムシ。成虫の寿命は1ヶ月と短い。
フェイスタメルシワバネクワガタ (アンデス山脈)・・・2000m級のアンデス山脈高地の熱帯雨林に生息。南米産クワガタでは、チリクワガタに次ぐ大きさ。♂の頭部は小さめで大アゴと脚が長い。前ハネにシワのような薄い溝が全体に発生し、銀色の細かい毛が多く生えている。
(写真出典:Wikimedia Commons )
参 考 文 献
「世界のクワガタムシ・カブトムシ カラー図鑑 飼い方」(青木猛、西東社)
「GET!角川の集める図鑑 昆虫」(丸山宗利ほか、KADOKAWA)
「世界のふしぎな虫 おもいろい虫」(今森光彦、アリス館)
「講談社の動く図鑑MOVE昆虫」(講談社)
「すごい自然図鑑」(監修 石田秀輝、PHP研究所)
「昆虫たちのやばい生き方図鑑」(監修 須田研司、日本文芸社)
「366日の美しい昆虫」(三才ブックス)
「大自然のふしぎ 昆虫の生態図鑑」(学研)
「世界一うつくしい昆虫図鑑」(クリストファー・マーレー、宝島社)
参考動画:unnokazuo(海野和男) - YouTube
特別展「世界の昆虫展 世界は昆虫であふれている」(秋田県立博物館)
「カブクワ王国」(秋田ふるさと村)