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昆虫シリーズ66 ハムシの仲間

  • 植物の葉を食べるハムシ
     体長1cmにも満たない小さな種がほとんどだが、光沢をもち、美しい色彩を持つ種が多く見られる。成虫も幼虫も植物の葉を食べることから、「葉虫(ハムシ)」と名付けられた。ハムシの中には、園芸作物や農作物を食害するものもあり、害虫として知られる種も多い。ハムシの仲間は、世界では約4万種、日本では約660種が知られている。
     ハムシの多くは年1化で、夏から秋に新成虫が出現し、越冬して翌春に生殖活動を行う。春、暖かくなると冬眠状態から目覚め、食草となる植物の葉や花の花粉などを食べる。成熟した♀は♂と交尾し、幼虫のエサとなる植物の葉などに卵を産み付ける。数十個の卵を並べて産み付ける種や、1つ1つ産み付ける種、中には自分の糞を塗りつけて目立たなくする種もいる。(写真:コガタルリハムシ)
  • 美麗種・アカガネサルハムシ・・・赤銅色と金緑色に輝く美しいハムシ。4~6月にかけて見られ、ノブドウ、エビヅルなどのブドウ類、トサミズキ、ハッカなどの葉を食べる。幼虫は土の中で成虫と同じ植物の根を餌にしている。幼虫、成虫ともブドウの害虫として知られる。
  • 参考動画:アカガネサルハムシの飛び立ちスローモーション - YouTube
  • 体長 5.5~7.5mm。全国に分布。
  • オオルリハムシ・・・青色系の成虫から赤色系の個体など地域変異が大きい。日本海側では、金属光沢を放つ青藍色で美しい。食草は、シロネ、ヒメシロネ、クルマバナ、エゴマなど。これらの湿性植物の生育する湿原に生息し、自然度の高い湿原環境の指標種。
  • 参考動画:オオルリハムシ 2021(赤色系) - YouTube
  • 体長 11~15mmで、日本産ハムシの中では最大級。 本州(佐渡を含む)、九州。
  • コガタルリハムシ・・・小さくやや細長い体型で、光沢のある瑠璃色のハムシ。スイバやギシギシで見つかる。越冬していた成虫は、早春から明るい草地に現れる。大きな腹をした♀を巡って数匹の♂が競う姿をよく目にする。葉裏に30~50個をまとめて産卵する。孵化当初の若い幼虫の食痕は、葉の裏側から薄皮を残した透かし模様になる。幼虫の成長は早く、葉を食べる量も日増しに凄まじくなり、葉は枯れた葉脈だけになる。 
  • 参考動画:コガタルリハムシ 交尾の邪魔をするヤツは・・・ - YouTube
  • 体長 5.2~5.8mm。北海道から九州まで広く分布。
  • ギシギシの葉上で交尾するペア 
  • 一枚の葉に羽化した成虫が群がり、あっと言う間に穴だらけ。 
  • クロウリハムシ・・・林縁や畑、草地などで見られる普通種。ウリ科の栽培種やカラスウリのほか、様々な花も食べる。一見、かわいい虫だが、野菜や多種類の花も食べる害虫として嫌われている。同じ仲間のウリハムシは茶色に対して、本種は黒い。幼虫は、土中で育つので葉の上にはいない。
  • 参考動画:クロウリハムシのトレンチ行動 - YouTube
  • 体長 5.8~6.7mm。本州から九州・琉球まで分布。
  • 成虫は、ウリ類の葉のほか、白い花にもよく集まる。♀は地中に産卵し、幼虫は根や地表の落果に潜入してそれを食べる。
  • 食害する植物・・・カボチャやキュウリ、カーネーション、ナデシコ、コスモス、ダイズなどの葉を食害する。 
  • ウリハムシ
     ウリ科の野菜につく茶色いハムシ。葉を穴だらけにするなど、ウリ科作物の天敵で、防除が難しい害虫として知られている。石垣や建物の隙間、草むらなどに集団(成虫)越冬し、暖かくなると活動を始める。4月下旬~5月頃にウリ科の作物に飛来し食害、株元の土中に産卵する。幼虫は白いウジ虫型。ふ化初期は細根のみを食害するが、成長すると太い根を食害し、時には茎にまで潜り込むこともある。新成虫は、7~8月に現れる。9月下旬ころ越冬場所に移動する。
  • 体長 5.6~7.3mm。本州から九州・琉球まで分布。 
  • 食害する野菜・・・カボチャ、キュウリ、ゴーヤ、スイカ、ズッキーニ、メロンなど  
  • イタドリハムシ・・・背面は、黒色で鮮やかな赤色紋が目立つハムシ。この紋には個体変異があり、赤色味が強い個体、黒が多く赤色紋が8つに独立する個体など様々。草地や林縁、土手などのイタドリやスイバの葉に集まる普通種。春に数が多い。人が近づくと手足を縮めてコロリと落ちる擬死の習性をもつ。成虫で越冬し、春に食草を訪れ、産卵する。ふ化した幼虫はそれを食べて夏ころに新成虫が出現する。 
  • 参考動画:【日本の昆虫】イタドリハムシ - YouTube
  • 体長 7.5~9.5mm。北海道から九州まで分布。 
  • 葉裏で休憩する成虫。卵は地表に固めて産み、幼虫は葉を食べて育つ。成長した幼虫は地中で蛹化する。 
  • スゲハムシ(キヌツヤミズクサハムシ)・・・高山帯のイワイチョウやオニシモツケ、タカネアヤヤギソウ、マルバシモツケ、ミヤマトウキ、ヤマブキショウマなどの花でよく見かける美麗種。赤色、緑色、青色、黒色など個体差が著しい。食草はスゲ類、ハリイ類。サナギで越冬する。
  • 体長 7~11mm。北海道から九州まで分布。 
  • 成虫は4~9月に現れ、各種の花を訪花。 
  • ヤナギハムシ・・・平地から山地のヤナギ類の葉の上で見られる。羽化直後は黄色だが、成熟すると赤色味が増す。20個ほどの黒い点がある。北海道から九州まで分布。体長7~9mm。 
  • 参考動画:ヤナギハムシの成虫【愛知県森林公園】 - YouTube
  • クルミハムシ・・・平地から山地のオニグルミ、サワグルミなどの葉の上で見られる普通種。体は扁平で黒っぽいハムシ。前背板の両サイドは黄褐色。 
  • 参考動画:クルミハムシ Gastrolina depressa ♂の♀をめぐる戦い - YouTube
  • 体長 6.8~8.2mm。北海道から九州まで分布。
  • ヨモギハムシ・・・ヨモギの葉の上に集まる普通種。金銅色と青銅色、青黒色などの個体差がある。よく歩き回り、ほとんど飛ばない。全国に分布。体長7~10mm。 
  • アトボシハムシ・・・アマチャヅル、カラスウリの葉の上に集まる普通種。黄褐色で、2~3つの丸い黒色紋がある。北海道から九州まで分布。体長4.5~5.5mm。 
  • クワハムシ・・・青藍色の光沢があり、体型はやや細長く触角は長い。胸部に明瞭な横溝がある。春から初夏にかけてクワ、コウゾ、ヤマナラシ、エノキなどの葉を食べる。 成虫は3~8月に現れる。体長5~7.3mm。北海道から九州まで分布。
  • ヤツボシツツハムシ・・・黄色に8つの黒色紋があり、なかなか美しいツツハムシ。クヌギ、コナラ、クリ、イタドリなどを食べる。成虫は4~6月に現れる。卵は糞の殻で包み、地表に落とす。幼虫は糞の殻に入って生活し、幼虫で越冬する。
  • 参考動画:【日本の昆虫】ヤツボシツツハムシ - YouTube
  • 体長 8mm。 本州、四国、九州に分布。
  • バラルリツツハムシ・・・広葉樹林の林縁で、バラやコナラ、ハギ、フジ類などの葉の上で普通に見られる。背面は光沢を帯びた藍色で、脚は黒色。成虫は4~6月に現れる。近似種が数種おり、その区別は難しい。
  • 体長 3.5~4.5mm。 北海道から九州まで分布。
  • ドロノキハムシ・・・成虫は5~9月に発生。成虫で越冬する。体長10~12mm。北海道から九州まで生息。食草は、ドロノキ、ヤブナラシ、ヤナギ類。
  • ハッカハムシ・・・金銅色の鈍い光沢があり、丸い隆起が列状に並ぶ。青みを帯びる個体もあるという。成虫は4~10月に現れる。体長7.5~10.8mm。北海道から九州まで生息。
  • クロボシツツハムシ・・・赤褐色地に3対の大きな黒色紋がある。赤と黒の模様は、テントウムシに擬態していると言われている。変異があってほぼ全体が黒色の個体もいる。産卵時、♀は卵を糞で包み、地表に落とす。幼虫は糞の殻に入っており、地表で腐植質を食べて育つ。成虫は4~7月に現れる。幼虫で越冬する。本州から九州まで生息。食草はナシ、クリなど。体長4.5~6.2mm。
  • ブタクサハムシ・・・北米原産のハムシで、本州以南に外来種として野生化している。淡い黄褐色~黄褐色で、微細な毛に覆われている。幼虫・成虫ともに花粉症の原因ともなっている外来種のブタクサを枯死させるまで食害するため、その駆除に役立つ生物農薬として期待されている。しかし、ヒマワリなどのキク科の有用種をも食害することもあるという。体長は約4~5mm。日本では春に産卵し、成虫で越冬する。
  • テントウムシに擬態:ヘリグロテントウノミハムシ
     一見、テントウムシだと思うほど似ているが、刺激を与えると跳躍して逃げる。テントウムシは外敵に襲われると、関節から苦い汁を出して身を守ることから、鳥などが嫌って食べないと言われている。そのテントウムシに擬態することで、天敵から身を守っていると考えられている。1980年代初め頃から,関東地方を中心に公園や庭園、街路などで大発生を続け、特にヒイラギモクセイ,ヒイラギ,ネズミモチに被害が多い。関東や四国では通常年1回発生。成虫は,交尾後新芽・新葉に産卵し,卵は10日前後で孵化。テントウノミハムシの産卵は春にだけ行われるが,本種では夏~秋にかけても産卵が見られる。
  • 参考動画:テントウムシではない!擬態?テントウノミハムシの一種 Argopistes coccinelliformis? (leaf beetles、葉虫) - YouTube
  • クロオビツツハムシ・・・赤に黒の波状帯があるツツハムシ。体長約5~6mm。成虫はイタドリ、ハギ、フジなどの葉を食べる。本州以南に分布。
  • 参考動画:イタドリの葉に集まるクロオビツツハムシ 20240709 #LeafBeetle - YouTube
  • カメノコハムシの仲間・・・円形に近い半透明な甲羅を持ったカメノコハムシ。成虫、幼虫ともに、ホウレンソウやフダンソウなどのアカザ科作物の葉を食害する農業害虫として知られている。ヨツモンカメノコハムシのように、サツマイモの葉を食害する種類もいる。
  • 体長 5~5.5mm。北海道から九州、琉球まで分布。
  • セモンジンガサハムシ・・・背面の中央に黄色く輝くX字紋があるのが特徴。サクラ、リンゴ、ナシなどのバラ科の葉を食べる。別名リンゴジンガサハムシとも呼ばれている。本州以南に分布。体長4.5~6mm。
  • 国立環境研究所/昆虫類 アラートリスト「コロラドハムシ」
     北米西部原産のコロラドハムシは、ナス科植物、特にジャガイモに寄生し、葉を食害する重要害虫。日本には未侵入だが、植物防疫法上の輸入禁止動物に指定されている。食害が進むと全ての葉がなくなるという。ジャガイモのほか、ナスやトマトも食害する。
  • 成虫は、黄色から橙色で、10本ほどの黒い筋がある。体長8.5~11.5mm前後。年に2回発生。越冬成虫は、春~初夏にかけて土中から出現し、ジャガイモの葉を食害する。葉の上に卵が産み付け、4~14日で孵化する。幼虫も、成虫と同様に葉を食害する。老齢幼虫になると土中にもぐって蛹化する。気温にもよるが、通常8~18日で羽化する。
  • 北アメリカでは、当初、ナス科の雑草を食べていたが、19世紀中ごろに西部が開拓されてジャガイモが栽培されるようになると、ジャガイモを食害し、急激に分布域を広げた。現在、ヨーロッパやアジアにも分布を拡大している。
参考:海外で撮影された美麗なハムシ
参 考 文 献