野鳥シリーズ55 キクイタダキ
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- 日本で最も小さい鳥・キクイタダキ(スズメ目キクイタダキ科)
重さが5グラムほどしかない日本最小の鳥。頭部に黄色の冠羽があり、それが開くと菊の花に似ていることから、室町時代に「菊戴(きくいただき)」の名がついた。ヨーロッパ、アジア大陸の亜寒帯の針葉樹林に生息し、日本では本州の亜高山帯から高山帯のトウヒやシラビソなどの針葉樹林に生息。冬季は、平地林や公園などでも見られ、コガラなどのカラ類やエナガと混群を形成する。
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- 鳥の王・・・ヨーロッパの伝説や民間伝承によると、小さな鳥にもかかわらず、しばしば「鳥の王」とされる。その理由は、頭頂部の黄色い冠羽が、あたかも王冠のように見えるからである。ちなみに、学名に含まれるregulusは、「小さな王」という意味である。
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- 見分け方・・・頭部の黄色、翼に2本の白いライン、体の割に目が大きく、目の周りを白い羽毛の輪がとりまいている。
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- 声・・・繁殖地の高山などでは、針葉樹の枝先などで「チィチィチィ・・・チリリリリ」「ツチツチツチ、チリリリリ」とさえずる。声が高く、早口で鳴く。地鳴きは「ツー」「チッ」と高く短く鳴く。
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- 生 活・・・広葉樹にとどまることはほとんどなく、常に針葉樹の枝先で行動している。葉の茂みの中を移動しながら蛾の幼虫などの昆虫類を捕食する。小さい体と細いクチバシは、他の種が利用できないような針葉樹の細かい隙間からもエサをとることができる。巣は、蘚類、地衣類、イネ科植物の葉などで椀型につくられ、クモの糸で小枝から吊り下げられる。産卵期は6~7月、卵数は5~8個。
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- 巣づくり・・・オスは、1羽だけで盛んにさえずりながら巣の外側だけをつくる。その後、メスが気に入ると協同で作業し、獣の毛を山ほどくわえてお産の床づくりをする。ヒナがかえるとチョウや蛾の幼虫、サナギをせっせと運ぶ。
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- 越冬期・・・平地林や公園でも見られる。体が軽いことから、ハチドリのようにホバリングも自由自在・・・枝先で頻繁にホバリングしながら昆虫類を捕食する。よくカラ類の混群に入って行動する。本種は針葉樹に固執する傾向が強く、スギやアカマツの林で見ることが多い。
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- 日本最小の鳥だけに、獲物を狙うカマキリに捕まって食べられてしまうこともあるらしい。
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- 頭にいただいた菊の花びらを開花させるのは、繁殖期の初めの頃に限られ、なかなか見られない。縄張りを争ってオス同士で対立する時に、ジージーと鳴き、尾を開閉しながら頭の冠羽を逆立てる。同じくメスへのディスプレイの時にも冠羽を逆立てる。
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参 考 文 献 |
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
「鳥のおもしろ私生活」(ピッキオ編著、主婦と生活社)
「野鳥観察図鑑」(杉坂学、成美堂出版)
「日本野鳥歳時記」(大橋弘一、ナツメ社) |