野鳥シリーズ① ヤマセミ |
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![]() ヤマセミは、山地の渓流や湖沼に生息し、ダイナミックなハンティングで知られる。川にいるカワセミに対し、山地の渓流に生息するカワセミの仲間だからヤマセミ。日本最大のカワセミ類で、キジバトよりも大きい。「渓流の貴公子」などと形容されるほど姿・形が美しく、野鳥ファンはもちろん、渓流釣りファンにも根強い人気がある。 |
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![]() 黒白の斑模様(鹿の子模様)をしているが、上の写真を見ると森の中では保護色として機能していることが分かる。頭は大きく、ボサボサした長い冠羽がある。羽毛が身体を幾重にも覆い、寒さから身を守っている。右側のオスの胸元と頬の下は、淡いオレンジ色を帯び、左のメスは白黒のみだが、翼を広げると、その裏はオレンジ色をしている。長めのクチバシは黒いが、先端と基部では白っぽさも目立つ。 |
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![]() ヤマセミは、流域に3~5kmの広い縄張りを持ち、その中に何ヵ所か決まったエサ場や休憩場を持っている。絶対数が少なく、さらに警戒心が強いから滅多に見ることができない。それだけに憧れの鳥である。 |
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▲オレンジ色がなく白黒のみなのでメス | |
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![]() 飛びながら「ケレッ ケレッ」「キャラッ キャラッ」と鳴くことが多い。とまっている時にはほとんど鳴かないが、巣の近くでは木の枝や岩の上にとまって「キョッ、キョッ、キョッ」と鳴く。 |
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![]() 主食は、イワナ、ヤマメ、ウグイ、カジカなどの魚類。大きな渕や湖沼の岸に突き出た枝の上などに止まって魚を探し、急角度で水中にダイビングして魚を捕える。長さ20cmほどのサイズまでとらえることができる。動きの素早いイワナ、ヤマメも捕食できる。 上の写真は、清流に棲むカジカを口にくわえて木の枝に止まっているところ。その後、カジカを枝に何回も叩きつけて殺したり、骨を砕いて軟らかくし、頭から飲み込む。魚の頭を前方にくわえている時は、メスやヒナに与える時である。3月半ば頃からオスがメスに魚をプレゼントする求愛給餌がみられる。 |
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渓流魚は、水面に張り出した木の枝から落ちる落下昆虫を捕食する。その渓流魚を狙うヤマセミにとって、こうした枝は格好の見張り場である。 | |
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![]() 止まり木から獲物を発見すると、魚の動きに合わせて冠羽がしきりに上下し、狙いが定まると同時にピタッと頭に張り付く。狙いがついた瞬間・・・高飛び込みを思わせるような美しいフォームで飛び込み、水に入る寸前に翼を開いて速度を落とす。 水中では素早い魚だが、ヤマセミのスピードはそれを遥かに上回る。鋭いクチバシを大きく開いて、逃げる隙を与えることなく瞬時に魚を捕らえる。すぐに向きを変え、翼で急浮上し、止まり木に戻る。冬場は、魚が1ヵ所に群れているので、数匹まとめて捕えることも良くあるという。 |
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![]() 「釣りキチ三平 ヤマメ編」には、自分の羽毛をわざと落として疑似餌とし、魚をおびきよせてハンティングするシーンが描かれ、その巧みな狩りをするヤマセミを「渓流の魔術師」と名付けている。また、それを見た釣り師がヤマセミの疑似餌作戦にヒントを得て毛バリを考案したという毛バリのルーツが描かれている。だから、渓流釣りファンにとって、ヤマセミは釣りの師匠ともいえる存在で、野鳥の中で最もランクの高い憧れの鳥となったのである。 |
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![]() 巣づくりは、つがいで行い、高さ3m以上の急斜面の土の崖に、くちばしを使って巣穴を掘り、短い脚で土をかき出す。穴の深さは1m余りにもなる。完成まで20日ほどを要し、細かい土が敷かれた上に卵を産む。産卵期は3~6月、卵数は4~7個。春から夏にかけては、巣穴当たりを中心に暮らす。魚を捕る場所も巣穴から近い場所になる。特に繁殖期は、オスの縄張り争いや求愛給餌、交尾、ヒナの巣立ちなど、絵になるシーンが狙えるという。 |
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![]() ヤマセミは、体が大きい分、巣立ちは遅い。巣立ちが近づくと、親はエサを与える時、ヒナを巣の入口まで誘って与える。それは巣立ちを促す準備でもある。巣立ったばかりのヤマセミは、水面に浮かぶ落葉や枝を捕え、魚を捕るハンターの練習をしたりする。 |
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![]() 上の写真は、鳴きながら飛んできて枯れ木に止まり、毛づくろいを始めたところ。こんな時は長居することが多いという。羽づくろいは、クチバシで丹念に羽づくろいをする。頭かきは、足で行う。 |
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![]() まるで左右から押しつぶしたセンベイのように幅が狭い。あの格好いい横顔からは、想像できないほどユニークである。恐らく、水中にダイビングする際に水の抵抗が少ない形状なのであろう。 |
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▲「ヤマセミが最も体をのけぞらせた瞬間」・・・やっぱり格好いい | |
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![]() ヤマセミは、人間に対して警戒心が非常に強い。運よく出会ったら、1週間ぐらい行動パターンを観察した後、ヤマセミにストレスを与えない場所と距離を決める。撮影場所が決まったら、「ブラインド」と呼ばれる仮設のテントや迷彩ネットなどで身を隠す必要がある。さらに、被写体と出会うには、大変な忍耐と時間を要する。 |
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![]() 撮影地を見極めるには、日頃からカメラマンたちに声を掛け合い、撮影場所を教え合う関係を作っておくことが近道。自力で探す場合は・・・川が蛇行し流れが複雑な地点は魚が集まりやすい。そうした場所の流れに迫り出した枝や倒木がある地点は、ヤマセミの格好のエサ場になる。止まり木から狙いを定め、1日に15匹ほど魚を捕食する。そうした定番の止まり木に魚のウロコがたくさん張り付いていたら、ヤマセミが魚を捕って打ち付けた跡である。 |
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![]() 「かなり気まぐれで、撮り放題の日もあれば一回も出ない日も・・・ちなみに、前回は3回出てくれましたが暗くてまともに撮れたのは1回だけ、今回は1回出ましたが一瞬の出会いでワンポーズだけした。場所が分かっていてもこんな状態なので、手ごわい相手です。」(土谷氏のプログより) |
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![]() 鳥は追い掛けると逃げてしまう。追い回すのではなく、狙う鳥が必ず来るような場所を見極め、その近くに撮影用のブラインドを張り、じっくりと待つ。その際、撮影用のブラインドは1カ月以上前に設置する。なぜなら、ブラインドがヤマセミに当たり前の存在として受け容れられ、彼らが、ブラインドの中にいるカメラマンを無視するようになって初めて本当の姿を撮影できるからだという。 |
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![]() 大雨が降った翌朝、沢の方からけたたましい鳴き声が聞こえた。よく見ると、ブナのトンネルを沢沿いに低空飛行で上流に向かう鳥が見えた。体が白くデカイ。しばらくすると、今度は上流から下流に飛んで行った。それを数回繰り返す。白く見えたのは、体の下面で、上の面は、白と黒のまだら模様だった。紛れもなくヤマセミだ。 恐らく、雨後の増水で浅瀬に避難しているイワナを狙っているのだろう。低空飛翔から食えそうなイワナを見つけると、ダイビングして捕食しているに違いない。立派な冠羽を持つ渓の狩人「ヤマセミ」にとっても、ここは楽園に違いない。 |
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![]() 川の中上流部・・・奥森吉・ノロ川流域、大滝山の渓流、仁別・旭川沿いの渓流、岩見川上流部、抱返り渓谷、真昼川、横手川大鳥公園付近の川原、皆瀬頭首工、十和田湖奥入瀬渓流など。 |
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参 考 文 献 | |
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