樹木シリーズ143 ミヤマハンノキ
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- 高山性のハンノキ・ミヤマハンノキ(深山榛の木、カバノキ科)
亜高山帯から高山帯に生える雌雄同株の落葉低木~小高木。痩せ地でも育ち、特に環境の厳しい場所では、高さ1~1.5mのブッシュ状になる。雪崩の多い斜面では弓なりに曲がった樹形になる。秋田駒ヶ岳では、新道コースをはじめ広く生育し普通に見られる。
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- 名前の由来・・・高山性のハンノキだから、「深山榛の木」と書く。
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- 葉・・・互生し、広卵形で先は尖り、縁には不揃いの細かな鋸歯がある。側脈は9~12対あり、裏面に隆起する。表面はほとんど無毛。
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- 雄花、雌花・・・垂れ下がっている大きな方が雄花。枝先に立ち上がっている小さな方が雌花。雄花序は長さが4~5cm、枝先に2~3個ずつ垂れ下がってつく。雄花は濃褐紫色の苞鱗の内側に3個つく。雌花序は狭卵形で葉腋に数個ずつ直立する。
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- 果穂・・・球果状の果穂は、秋に熟すと隙間が開き、中から周りに薄い翼をもつゴマ粒のような種子が出て、風で散布される。
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- 痩せ地でも育ち、周りの土を肥やす・・・根に根粒菌が共生し、空気中から窒素を取り込み植物体に供給するので、養分の乏しい土壌でも生育できる。秋になって落葉する葉には窒素が大量に含まれているので、周りの土壌は肥えていく。土壌の栄養条件が整うと、ダケカンバやカラマツ、シラビソ、コメツガなどの高木にその場を奪われていく。
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- 雪崩の攪乱に適応・・・大きくならず低木で、幹がとてもしなやかで、雪崩に遭って幹が押し倒されても、折れずにまた立ち上がる。さらに萌芽能力が強く、何本もの幹で株立ちして、雪崩のダメージを分散している。
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- 火山噴火がもたらす攪乱・・・秋田駒ヶ岳のように噴火による攪乱は、パイオニア植物が生育するチャンスでもある。こうした攪乱は、先駆種を含めた種の定着のチャンスを与え、種の多様性を助けているともいえる。噴火という破壊は、同時に植物たちの創造を生むドラマの始まりでもある。(写真:活動を続ける火山・女岳)
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参 考 文 献 |
- 「山渓カラー名鑑 日本の高山植物」(山と渓谷社)
- 「アジサイはなぜ葉にアルミ毒をためるのか」(渡辺一夫、築地書館)
- 「フラワートレッキング 秋田駒ヶ岳」(日野東・葛西英明、無明舎出版)
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